12月1日の神戸新聞にこんな記事がありました。
『車酔い続出で伝統の伊勢断念 姫路の小6修学旅行』
約60年もの間、姫路市内の小学校の修学旅行は奈良~伊勢という行程でしたが、来年からは京都~奈良へ変更するとのこと。その理由が「乗り物酔い」する児童が増えたから。少しでも移動距離の短い場所ということで伊勢ではなく京都になったみたいです。
バスや電車、タクシーなど、乗り物に乗ると必ず気持ち悪くなり、最悪の場合吐いてしまう。楽しいはずの旅行も苦痛になってしまいますよね。酔い易い人にとっては深刻です。
出来る限りウエストを緩める、一番前に座る、外の景色を見る、事前に何も食べない・・・ いろんな対処法がありますが、何を試しても特に効果があったという声は聞きません。
人間の体は耳、目、筋肉・関節といった姿勢をコントロールするセンサーが3つあります。この3つのセンサーからの情報は脳に集められ、処理されることでバランスや姿勢をコントロールしているのですね。 乗り物酔いは3つの情報にズレができたとき、脳がそのズレを処理しきれず起きる症状です。
もし、いままで経験したことのないズレをセンサーが感じ取とると、それを理解しようと脳の仕事は一気に増えてストレスを感じます。私たちも慣れない作業や仕事はうまくできないですしストレスを感じたりしますよね。もちろん脳も同じです。
このストレスが大きいと脳がパニックを起こし、呼吸器や胃、腸を不安定にさせてしまい、いわゆる乗り物酔いという状態になるわけです。 この感覚の混乱が乗り物酔いになる仕組みです。
また、処理するだけでなく、一度経験した様々な運動パターンを脳は記憶します。それぞれのセンサーにズレが生じても、過去に経験した状況であれば脳が「問題ない」と判断し、ストレスなく平気でいられるのです。
ということは乗り物酔いにならないためには経験値を積むことが重要になるわけですね。脳が学習している動きであれば感覚混乱は置きにくいはずなのです。酔うから乗らないではなく、むしろ積極的に乗ることが必要になるということになるのですが・・・難しいですね。
あと三半規管を鍛えることも重要です。連続的な揺れは三半規管の働きを弱めてしまいます。三半規管がうまく働かないと、それだけ視覚と平こう感覚のズレが大きくなってしまいます。それだけ処理する脳の負担が大きくなってしまうわけですね。
ところで、強靭な平衡(へいこう)感覚を持っているイメージが強いのが、フィギュアスケート選手だと思います。実際、あるテレビ番組でフィギュアスケーターの安藤美姫さんがどのくらい回っていられるかに挑戦していて、1,000回転しても全く平気でした。普通の人は5回回っただけでもフラフラしてしまいますよね。三半規管が強いからフィギュアスケーターになれるのかというとそうでもなく、三半規管が弱すぎるからフィギュアスケートを始めた人も欧米などでは少なくありません。例えば、皇帝の異名を持つプルシェンコ選手もそんな一人です。
オリンピック4度出場、金メダル2回、銀メダル2回。世界選手権優勝3回、欧州選手権優勝7回、グランプリファイナル優勝4回。グランプリシリーズ通算22勝。そんな選手でさえ自伝に「乗り物酔いが酷くてバスなどの公共の乗り物にさえ短時間ですら乗れなかったし、フィギュアスケートの回転する練習をしては、尋常でない鼻血を出して、あまりの出血の多さに大会を欠場したり、『こんなに出血したら死ぬかも』と思ったこともあった」とあります。華麗な演技からは想像もできませんが、平衡感覚は鍛えることができるということですね。
もちろんフィギュアスケートでなくても、事務用の回転椅子等でクルクル回ってもOKだと思います。回った後は頭の揺れが治まるまでじっと耐える、この繰り返し。(※最初は少ない回転数からはじめることと、目が回っている状態のときはじっとしていること、そして周囲の安全の確認は必ず行ってください)
ささやかな努力ですが効き目は大きいので、楽しい旅行を想像しながら頑張って続けてください。
足つぼ(足もみ)も有効ですよ。乗り物酔いは直接治すことはできませんが、やはり血行がよくないと何事もよくなりませんから。漢方薬では乗り物酔いに五苓散(ごれいさん)を処方します。これは体内の余分な水分を追い出す作用があり、乗り物酔いは耳の奥になる内耳にリンパ液が過剰になっている=三半規管がむくんでいると捉えているから。メニエールと同じですね。全身の血行を回復し、正しい血液の勢いで余分な水分を追い出すという視点からも足を揉んで血液循環を回復させるというのは効果があると思います。 最近の小学生はメタボやロコモ、体力不足が社会問題になっていますが、運動不足による血行不良も関係していると思います。
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