断食・・・現代人にはなかなか厳しいテーマだと思います。
断食というと、「辛い」とか「苦しい」とかネガティブなイメージをされる人が多いと思います。現代人は何も食べない日は皆無です。それだけ「何も食べない」というのは耐えがたいですよね。しかも、食べないと元気がでなくなるし、身体が弱くなるイメージもありますよね。これが健康法といわれてもピンとこないと思います。単なる精神修行の世界。
ところが、最近ファスティングという名前でブームの兆しも出てきているようです。
断食は古くから人間の未知なる力を呼び起こす方法と捉えられてきました。歴史を紐解くと紀元前から行われていたようです。そのルーツは、宗教における修行の一環としての業です。キリスト教、仏教、イスラム教、ヒンズー教など、さまざまな宗教に共通して、断食が精神修行として行われていました。有名なのがイスラム教のラマダンですよね。我が国でも、天台宗の荒行として知られている千日回峰も、そのクライマックスには9日間断食をするという業があります。
ちなみに朝食は英語でbreakfastですが、これは「fast=断食」、「break=やめる、破る」というキリスト教の言葉に由来しています。どんなに食べるのが大好きな人でも、寝ているときは断食業をしている状態だといえ、それを最初に破るからbreakfastなんですね。
世界中の研究者も、断食がもたらす健康効果に注目するようになってきました。これまで研究者たちは、食べ物や薬品を「摂りいれる」ことで健康を維持したり病気を治すことに注力してきたため、身体に「何も入れない」という断食は、かなり特異な世界で、非常識で非科学的な行為とみてきました。特に栄養学の面からは徹底して否定的に見られがちでした。
本格的に研究されるようになったのは2011年、アメリカの心臓病学会が発表した論文がきっかけと、本当につい最近のこと。
でも、断食の効果は東洋医学では何千年も前から気づいていましたし、生物学の世界でも、とっくに知られていることでもあります。
人体の生理現象には「吸収は排泄を阻害する」という原理があります。断食中に起きる変化として、入るものがない分、出す反応が大きくなります。吐く息が臭くなる、黒い便がでる、発疹が酷くなる、尿が濃くなる、目ヤニや鼻水、鼻糞が大量に出るようになるなど、とにかく老廃物の排泄が激しくなります。中には全身の皮膚から臭いのあるドロドロしたものが出てくるという人もいるようです。肌荒れやアトピーなどの皮膚疾患に効果があるというのも、これが根拠になっているようです。
なにかと世間の注目を浴びた石原慎太郎元東京都知事は、著書『老いてこそ人生』の中で断食を行ったときのことに触れています。「老廃物が体中から染み出してきて、2,3日すると自分でわかるくらい部屋中に異臭が立ち込める」とあります。
排泄物は血液の汚れが形を変えた老廃物なので、身体の外へ出す、捨てること自体は問題ないのですが、あまりにも激しい反応なので不安に思ってしまうようです。
足つぼも全身の血液循環を促進させることで「排泄作用」を強めるのですが、断食もその作用を強力に促進させるといえそうです。
もうひとつの大きな変化として体温が上がります。体温が上がるということは免疫力も高まります。
野生の動物は怪我をすれば食べることをやめ、ひたすら空腹に耐えじっとすることで治癒させます。空腹になることで体温を上昇させ治癒力や免疫力を高めているのですね。
また、鳥が卵を温めるときも、親鳥はほとんど食べません。ペンギンもブリザード(吹雪)の吹き荒れる中、2ヶ月近く何も食べずに身を寄せ合って卵を温め続けます。体熱で卵をかえすのですが、食べたほうが体温が上がるのなら食べるはずです。実際、食べるより食べない方が体温が高くなります。
皆さん気にするカロリーは熱量のことなので、食べたほうが体温が上がるのかと思いきや、そうではないということです。体温計などないのに、野生の動物たちは「空腹時の方が体温が高くなる」と本能で知っているのですね。
ところで、病気になったとき食欲が落ちるものですが、もしかしたら本能で空腹時は免疫力と治癒力が上がると知っているからかもしれません。もしそうだとしたら「少しでも食べないと元気になれない」という考えは正しくないということになります。
ちょっとしたブームになりそうな断食ですが、みんながやっているからといって気軽に行うのではなく、必ず知識を持った専門家の指導の下行ってください。断食そのものは強い意志と根性があれば誰でも行えるのですが、問題は終了した後の回復のさせ方。
いきなり普通の食事をとろうとしても、なかなか身体が受け付けませんし、食べたとしても嘔吐や下痢、腹痛、ひどい人は腸ねん転を起こしたりと激しい反応が起こったりします。回復食というものが必要になります。予想外の反応がでたとしても、知識のある人がいると安心です。
1週間に1日とか1食だけ食べないといったプチ断食なら比較的安全に行うことができると思います。本格的な断食に比べると効果は小さいかもしれませんが、それでも充分な健康増進になるはずです。
あと断食中は水を飲むことを忘れずに。私たちは水を飲む以外に、食事からも水分を補給することができます。しかし、断食中は食事ができないため、その分、水分が非常に不足してしまいます。「酸素3分、水3日、食事3週間」という言葉があるように、人間、食事は3週間とらなくても生きていけるようにできていますが、水は3日とらないと生きていけません。それにキレイな水がないと老廃物の排泄がうまくできません。それだけ水分というのは重要です。
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