トマトは低カロリーでさまざまな栄養成分が豊富な健康野菜。美肌効果や風邪予防に役立つビタミンC、老化を抑制するビタミンE、塩分の排出を助けるカリウム、腸内環境を整える食物繊維などをバランス良く含んでいます。
漢方の世界では、血液を浄化し、脂肪の消化を助けてくれる食べ物と考えられています。クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸が胃液の分泌を促進させて消化を促し、ナトリウムやカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ性のミネラルが酸血症を中和してくれるので、肉や魚などの付けあわせにもピッタリです。
栄養豊富で健康効果が抜群なトマトのなかで、最近特に注目されているのがリコピンという成分。とりわけ「抗酸化作用」が強く、人間の体に悪影響をもたらす活性酸素を退治してくれるんです。
私たちは酸素がなければ生きていけません。ですが、酸素には細胞を酸化させ、老化や動脈硬化、がんなどの生活習慣病を引き起こす作用があることがわかっています。この酸素のことを活性酸素といいます。この活性酸素、本来は頼もしい健康の味方なんです。活性酸素は殺菌力が強いので、体内では細菌やウイルスを撃退する役目をしています。が、偏った食事や飲酒、過度の運動などが原因で増えすぎると、自分の健康な細胞にまで攻撃をし、傷つけてしまう悪者になってしまいます。
また、この活性酸素は血液をドロドロにします。こうなると、細胞に酸素や栄養を運ぶことができなくなり、さらに細胞から二酸化炭素や老廃物を受けとることができなくなります。また、流れにくい血液を無理に流そうとして血圧を高くして、動脈硬化になりやすくなり、動脈硬化が進行すれば、脳梗塞や心筋梗塞になることも。
リコピンはこの活性酸素を消し去って、血液をサラサラにしてくれるんです。増えすぎて悪者になってしまった活性酸素を退治して、脳卒中、動脈硬化、心筋梗塞などの深刻な病気から私たちの身体を守ってくれるガードマンといえる存在に。
トマトは、このリコピンを多く含む緑黄色野菜ですし、緑黄色野菜の中でリコピンが入っているのはトマトだけ 。ビタミンEは老化防止のビタミンといわれるほど抗酸化作用で知られていますが、リコピンの抗酸化力は、なんとビタミンEの100倍!
ヨーロッパに『トマトが赤くなると医者が青くなる』ということわざがあるくらい、トマトにはカラダにうれしいパワーがギュッと詰まっているんですね。
では、どのようにすると効率よくリコピンを摂ることができるか?ということですが、リコピンには油に溶けやすい性質があります。そのため油を使った調理法によって、吸収がぐんと高まります。しかも、リコピンは熱に強いので、炒めたり煮込んだりしても成分がそれほど減少する心配もありません。
日本人はそのまま生で食べることの多いトマトですが、海外ではむしろ生で食べるよりもオリーブオイルなどと一緒にトマトソースにしたり、シチューのベースなどとして調理することがほとんどです。効率的にリコピンを摂取することを考えれば、理にかなっているといえます。
例えばイタリアには、トマトとオリーブオイルを使った料理が数多くありますよね。イタリア料理は味だけではなく、実はガンや生活習慣病の予防の面でも非常に優れているといえそうです。 身体は大きいと心臓に負担がかかりやすいのですが、身体が大きいイタリア人に心臓病が少ないのは、こういった食文化も関係しているのかもしれませんね。
さらに効率的にリコピンを摂取するためには、生のトマトよりも加工品のトマトの方が優れています。トマトが赤いのは「リコピン」によるものなので、トマトは赤いほど多くのリコピンを含んでいるといえます。生食用のトマトはまだ青いうちに収穫するのでリコピン含有量は少ないですが、加工用のトマトは完全に熟して(=赤くなりきって)から収穫するので、リコピン含有量は多いといえます。
そもそも生食用と加工用は品種が違います。日本で作られている約8割が完熟しても色づきが浅い「ピンク系」と呼ばれる品種がほとんど。普段よく見る「ファーストトマト」や「桃太郎」はピンク系です。加工用は真っ赤になるタイプのものが使われます。赤味が薄いピンク系より真っ赤な加工用の方がリコピンは多いのです。
しかも、生のトマトより加工品の方が2~3倍もリコピンを吸収しやすいことが明らかにされています。なのでトマトジュースで摂る方がいいということになりますね。ジュースだと手軽ですし。最近は糖度10のトマトジュースも販売されているので、無塩でも特有の青臭さが苦手な人も飲みやすくなっていると思います。
ちなみにリコピン1日の摂取量約15mgが目標とされていますが、生トマトだと約500g(Lトマト2個)、プチトマトだと約250g(約17個)ですが、トマトジュースだと約160g(コップ1杯)トマトケチャップだと約75g(大さじ4杯強)となりますね。毎日トマト2個は難しいかもしれませんが、ジュースならコップ1杯なので手軽に摂れると思います。
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