サツマイモは、石焼き芋、大学いも、芋けんぴ、いもの天ぷら、スイートポテト等々、日本人には親しみ深い食べ物ですよね。江戸時代には、荒れ地でも逞しく育ち、幾度も日本人の飢饉(ききん)を救ったという歴史もあったりと、ありがたい食べ物でもあります。 でも、そんな昔から愛されてきたサツマイモは、ほんの10年前まではあまりパッとしない食べ物でした。
「お腹が張っちゃう気がして、苦しくなるからあまり食べれない。」
「料理法が思いつかない。天ぷらもしょっちゅうするものでもないし
」
という意見が多かったと思います。どちらかというと、ジャガイモの方がいろいろな料理やお菓子に使われていることが多いですよね。
ですが、ここ数年で人気は急上昇、特に、秋冬の風物詩のはずの焼き芋に関しては、40度近い気温が当たり前だった今年の猛暑でも、販売するスーパーが現れたりと、「平成最後の食ブームは焼き芋」といわれるほどの人気です。
昔ながらの“ほくほく”だけでなく“とろとろ”、“ねっとり”など食感のバリエーションも豊富になっったこと、熱を加えただけの食べ物ですが、スイーツのジャンルに分類されたことが人気に火をつけたとか。なによりサツマイモはビタミンC、ビタミンE、カリウム等が豊富な準完全栄養食!美味しさに加えて、昨今の健康ブームにもマッチしたことで空前のブームが起きているのかもしれませんね。
そんなサツマイモの栄養面についてまとめてみました。
●サツマイモの栄養
加熱しても残るタイプのビタミンC、カリウムが豊富、ビタミンB6、ビタミンEも豊富。紫品種にはアントシアニン、人気の安納芋にはカロテンも。さらに生のサツマイモに含まれるアミノ酸は18種類!他にも葉酸、パントテン酸、カリウム、銅、モリブデンなどなど。ただ単に含まれているだけでなく、サツマイモ1本(約200g)で、1食分に必要な摂取量を満たしてくれるのでまさに準完全栄養食といってもいいほど。日本人は幾度の飢饉の際、このサツマイモの栄養に助けられました。
●皮に秘められた成分1:ヤラピン
一般的に知られているもの以外にも、サツマイモには隠れた栄養素がいっぱいです。サツマイモを輪切りにしたときに、皮から5mm程のところから出てくる白いネバネバした液、これはヤラピンという樹脂を含む物質で、胃の粘膜を保護したり、排便をスムーズにする下剤的な効果があると言われています。
ただ、いまだに研究解明されておらず、よく分かっていないことが多いようですが、漢方の世界では「補中益気」「寛腸通便」の作用、つまり、胃腸の働きをよくして排泄をよくする作用があるとさせてきました。昔の人は科学の力に頼らずとも、経験から知っていたようですね。
ちなみに、このヤラピンは加熱に強いのでいろんな料理に使えます。ヤラピンはヒルガオ科の植物全般に入っていますが、その中で一般に食べられているのはサツマイモくらい。貴重な成分です。
またサツマイモにはセルロース(食物繊維)が多く含まれること、さらにアマイドという物質も含まれていて、これが腸内のビフィズス菌や乳酸菌の繁殖を促進してくれることが、総合的に作用してお通じがよくなるのです。
●皮に秘められた成分2「クロロゲン酸」
クロロゲン酸は抗酸化物質です。抗酸化物質は、癌や生活習慣病、そして老化の原因ともいわれる活性酸素を除去してくれます。胃癌の原因の1つといわれている発癌性物質=ニトロソアミンの発生を抑えてくれます。まだ完全に解明されたわけではありませんが、クロロゲン酸は紫外線によって生じる、シミの元ともなるメラニンの生成を抑制してくれるのでは?と期待されています。
コーヒーにもクロロゲン酸は含まれていて、一般社団法人全日本コーヒー協会の公式サイトには「クロロゲン酸がシミを予防する」という記事が掲載されています。
サツマイモ、特に焼き芋の皮をよく剥いて食べている人も多いと思いますが、それは×。ヤラピンもクロロゲン酸も、皮の周辺に多く含まれているので、サツマイモは皮ごと食べないと、せっかくのサツマイモに秘められた成分を捨てているのでもったいないですよ。
(参照:
一般社団法人全日本コーヒー協会)
●胸焼け
ブームになる10年ほど前まで、これがネックで焼き芋は敬遠されてきました。サツマイモを食べて胸焼けする人は、塩をつけて皮のまま食べると胸焼けを防ぐことができますよ。このことからもサツマイモは、やはり皮ごと食べるのがいいと思います。皮にはカリウムも多いので、塩を一緒に食べると味が引き立ちますし、とり過ぎた塩分を排出する役割をもっているので安心です。
●オナラ
ところで、サツマイモを食べるとオナラが出やすくなりますが、それはオナラの元となる腸内細菌が増加しているから。
サツマイモに多く含まれているデンプンは比較的消化されにくいもの。消化されなかったデンプンの断片は吸収されず、腸内細菌の栄養源となり分解され、炭酸ガスが発生してオナラが多くなるという理屈。サツマイモとオナラは、やはり密接な関係にあるんですね。
ちなみにですが、オナラが出ること自体は問題ありませんし、臭くないガスだったら、いっこうに健康には差し支えないです。
参考記事:オナラの臭いは腸からのSOS
●善玉菌を増やす
たとえ悪玉菌優勢の腸内環境であっても、サツマイモは善玉腸内細菌を増やしてくれるんです!
サツマイモは善玉菌の餌となるので、善玉菌を増やしてくれます。善玉菌の中には、乳酸などの酸を作る菌もいて、悪玉菌は酸に弱いので、悪玉菌を減らして腸内環境を改善してくれます。
●サツマイモの甘さ
最後にサツマイモの甘さについて。サツマイモにはβアミラーゼというデンプンを分解する酵素が、非常に多く含まれています。デンプンはそのままでは甘くないのですが、このβアミラーゼという酵素がデンプンを分解し、マルトースという糖分にしてくれるんです。糖分が多くなると、もちろんカロリーも高くなります。このβアミラーゼが活発に活動する温度が、70~80度程の間なので、じっくり加熱すると甘くなり、一気に加熱すると甘みとカロリーを抑えられるなど、調理方法次第で甘みをコントロール可能です。
電子レンジや強火で加熱 急速加熱→甘みを抑えられる
ジャガイモに比べて、まだまだ料理に使われることの少ないサツマイモですが、栄養面を考えるとなかなかあなどれない食べ物だと思います。
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